我が国は、2014年に国連の「障害者権利条約」を批准し、条約の理念である「私たちのことは私たち抜きで決めないで」が、全ての福祉現場職員に問われることになった。2016年に「障害者差別解消法」が施行されたが、同年7月26日、相模原市にある「県津久井やまゆり園」において、元職員による「障がい者はいなくなればいい」という悲惨な殺傷事件が起き、2020年1月からその裁判が始まり、2020年3月に「死刑」の判決下され、被告側が上告しないことで、刑が確定した。法廷では、責任能力が争われて、この事件の背景は何も見えないまま裁判は結審した。我々は、「障がい者はいなくなればいい」という言葉に対して、どのように向き合い、どう実践するか関わる人々に問われて行く課題である。

2019年末から新型コロナウイルス感染が起こり、昨年世界中に感染が拡大し、この間、国から数回にわたる緊急事態宣言が発令されたが、未だ収束の見通しが経っていない。

感染拡大を防ぐために、マスク・手洗い消毒、３密を防ぐソーシャルデスタンス、外出自粛が求められ、これまで経験したことない新しい生活様式が求められ１年が経過した。会員事業所の利用者さんや家族が、感染した報告も数件ある中で、そもそも我々の業務は、利用者の方達と直接対面支援が前提であることから、戸惑いながらも感染予防に徹しながら新たな支援スタイルを模索しながら実践してきたと思う。2021年なっても、何種類かの変異ウイルスの拡大で、緊急事態宣言の発令が何時出されるか予断を許さない日々が続いている。ワクチンが全世界の人口に行きわたるまでは、この状況が続くと考えるべきで、長期的に感染予防を徹底しながら、生活支援の実践をして行かなければない。

街の中で暮らす精神障がいの方たちは、医療の継続と地域生活支援がセットであり、我々は、その生活のしづらさに寄り添いながらサポートしてきた。昔から、偏見や社会的防衛で、様々な行動制限が課せられてきた精神障がいの方たちを、当事者や関係者たちで、一つ一つその障壁を取り除きながら、精神科病院でなく地域生活することが当り前という時代に変化させてきたが、この新型コロナウイルス汚染での社会活動の制限は、新たな試練といえよう。

当会活動も、昨年は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため行動制限される中、総会を始め理事会の書面表決、常設委員会、部会、ブロック会が当初計画通り実施出来なくなり、動画配信等で研修などを行った。また、マスク調達やコロナ対応事業所の経過報告などコロナ禍において安心した支援ができるよう発信してきた。今年度は、コロナ禍の中で実施した事業を検証して、会員の皆様にさらなる発信出来るように、計画し実施して行きたいと考えている。

我々は、刻々と変化する社会的要因の中で生きている。精神障がいの方々の生活のしづらさは、毎日変わりなく続いている。ことの本質を見失わず、目の前に生活している精神障がいの方々がその人らしく安心して生活出来るような活動の実践をするためにも、情報の把握と業務の振返り、自己研鑽、地域関係者との横のつながりを強めて行く必要があり、当会の活動もその一翼を担えるように会員の皆様と活動を継続していく所存である。